第3章 ロールキャベツ男子
俺は慌てて火を止めた。見たらタイマーがすでに止まっている。うっかりしていた。煮込み過ぎたのだ。
「ごめん、失敗したかも」
と言い訳を並べながら、俺はお皿を出してロールキャベツを掬う。おらふくんも結局は手伝ってくれて、完成が不安なまま食卓にロールキャベツが並んだ。
「美味くなかったから正直に言ってもいいから」
「そんな言わんよ? こんなに美味しそうやん!」
あはは、と笑うおらふくん。本当に悪意がないんだろうけど、内心はどう思っているんだろうかとか、探りを入れたくなってしまう。俺はそんなことを考えないようにロールキャベツを切り分けて食べようとしたら、先におらふくんがかぶりついた。
「ん〜、んんん!」
「いや……分かんないから、食べてから喋りなよ?」
「ん!」
おらふくんは頷くとまずは口の中のロールキャベツをもぐもぐする。不器用なのか、左利きだからなのか、巻いたキャベツからごろっと中の挽き肉の塊が出てきて、それが可愛らしくて思わず笑うと、おらふくんもその理由に気づいて一緒に笑い合った。
「ロールキャベツ好きなんやけど、きれいに食べれないんよね〜」
「だから爪楊枝刺してたんだよね」
「え、そうやったん?」
こうして食べたら崩れないよと言うと、おらふくんはもう一つのロールキャベツを箸で挟んで上手にやってみせた。一度言っただけで出来るようになるんだから、本当は器用なのかもしれない。
「美味かったよ、おんりー!」
楽しい夕食の時間はあっという間に終わって、おらふくんからの満面の笑みを頂いた。俺も笑顔を返してみせた。
「それはよかった」
結局、美味いという言葉なんていらなかったのかもしれない。自分の考え過ぎは時々心を苦しめてしまう。程々にしないとな、と皿を片付けようとしたら、おらふくんが率先して片付けてくれた。
「食器洗いは僕がやるよ!」
おらふくんは、俺の一番のイケメン彼氏だ。