第2章 不器用な二人
ピンポーン……。
今日は、おらふくんの家に遊びに行く日。呼び鈴を鳴らすと、よく聞き慣れた声がパタパタと足音を出しながら近づいた。
扉が開けば、恋人の……おらふくんの笑顔が出迎えてくれる。
「待ってたで、おんりー」
「その名前は玄関閉めてからにしてよ」
「あ、そうやった」
俺たちは有名人なんだから、と付け加えると、おらふくんは本当に申し訳なさそうな顔をする。まぁ、多分大丈夫だけど、この警戒心のなさは、ちょっと心配だ。
「中入って入って。大掃除したんよ」
気持ちの切り替えが早いおらふくんは、すぐにいつも通り喋って俺を中に招き入れた。
そういうところが好きなんだけど。
そんなことが言えない俺は、招かれるままリビングへ向かうと、よく知った音楽が流れていてぎょっとした。
「ちょっとこれって……」
「おんりーの歌みたやで?」
俺の言葉に、おらふくんは悪気もなさそうにけろりと答える。
「恥ずかしいから止めてよ……」
とおらふくんのスマホに手を伸ばすが、案の定ロックがかかっているようで歌みたを止めることが出来ない。
「え〜、かっこいいのに」
明らかにしょんぼりとするおらふくんは、感情に素直だ。いや、気に入ってくれるのは嬉しいんだけど、普通本人の前で流すもの?
そう言いながらもスマホのロックをおらふくんが隣で解除したのをちらっと見えてしまって、俺はまた驚いた。