第10章 感謝
『ゲホッ…ゲホッ……!』
「美緒…!大丈夫か?』
『は、い……なんとか…』
「すまない…危険な目に合わせたな。」
咽せながらゆっくり呼吸を落ち着かせていると
赤井さんに突き飛ばされたであろう先輩教師が
私達を見ながらゆっくりと立ち上がった。
「くそっ……!こうなったらお前も殺してやる…!!」
彼は懐から折り畳みナイフを取り出して赤井さんに刃先を向けた。
『っ、赤井さん!』
「大丈夫だ。美緒はそこから動くな。」
座り込んだままの私の前に立った赤井さんの背中は
とても頼もしくて……
2人の様子を見ていると
男性教師が赤井さんに向かっていったけど…
赤井さんはナイフを持った彼の手を掴んで捻り上げていた。
「いてててて!おい!離せよ…!」
「ああ、離してやる…お前の腕をへし折ってからな。」
「!?や、…やめろ…!やめてくれ!」
「冗談だ。
美緒に骨を折る時の音なんて聞かせたくないからな。」
『っ…』
赤井さんは彼の腕を離した後
そのまま顔面に向かって蹴りを一発入れ、先輩教師は蹴られた反動で後ろに倒れ気絶した。
ナイフを持った男に対しても怯まず倒すなんて……
やっぱり赤井さんってすごく強いんだ…
赤井さんはふぅ、とため息をついた後
尻餅をついている私の元に近づき、片膝をついて視線を合わせた。
「遅くなって悪かったな。」
『いえ、そんな…
でもどうしてここにいるって分かったんですか?』
「お前からのメールを見て迎えにきたんだ。
途中でお前が使っていた買い物袋と鞄を見つけてな…
この辺りを探してた。」
『そうだったんですね…
見つけてくれて…ありがとうございました。』
ペコっと頭を下げると、赤井さんの手が私の頭に優しく置かれた。