第9章 恐怖
そして今日だけは一緒に寝て欲しいと美緒に頼まれ
こんなに怯えているコイツを1人にするわけにもいかず
彼女を抱き上げて寝室に向かった。
以前美緒の部屋まで送ってきた時にも思ったが
こいつの体は軽すぎだ…
もう少し太った方がいい、と本気で心配になった。
ベットで一緒に横になると
美緒はすぐに眠りにつき寝息を立て始めた。
俺のことを信用して無防備に眠っている美緒は
俺の胸元に手を置きギュッと服を握りしめていて…
顔を覗くと涙の跡が残っていた。
その時、先日見た夢の中でアイツに言われたことを思い出した。
…美緒を泣かせるな、とな。
「言われなくても分かってる…。
美緒を脅かす奴は、絶対に捕まえる。」
俺の呟きは眠っている美緒には聞こえていないだろう。
彼女が朝まで落ち着いて眠れるように
俺は何度か美緒の頭を撫でながら目を瞑り眠ろうとしたが…
俺も1人の男だ、
こんなに近い距離で女が寝ていることに対して何とも思わないわけがなく…
結局その日は一睡も出来ず朝を迎えた。
ため息が出そうになったところで
部屋にある目覚まし時計が鳴り、美緒はパチッと目を覚ました。
『え…!?あか、赤井さん!?なんで!?』
「おはよう。」
『お、おはようございます…
あの…もしかして一晩中一緒にいてくれたんですか?』
「ああ。」
『…お仕事…行かなくて良かったんですか…?』
…全く……
何でコイツは昨日あんなに怯えていたくせに
俺の仕事の心配なんかしているんだ。
自分の心配をしていればいいものを…
…本当に馬鹿な女だな。
「呼び出しが掛からなかったから大丈夫だ。
今日はあと10分後には出るがな。」
『10分!?急がなきゃ!!』
美緒はバタバタと慌てて寝室を出て行き
お前はまだ急がなくても余裕の時間帯だろう…と思いつつ
すっかり元気になっている彼女を見て安心した。