第9章 恐怖
洗面所で着替えや洗顔を終えて
リビングにいる美緒に声をかけてから玄関に向かった。
『赤井さんっ!待ってください!これ!』
美緒は後ろから俺を追いかけてきて
一体何事だと思い彼女の方へ目を向けると
何かが入った小さなビニール袋を俺に差し出していた。
『朝ごはんのおにぎりです。
急いで作ったので味の保証は出来ませんが…
良かったら時間ある時に食べて下さい。』
…そういえば美緒はいつも
朝にご飯が炊き上がるように炊飯器のタイマーのセットをしていたな…と頭の片隅で思い出した。
俺の為に朝から飯を用意してくれた事が嬉しくて
フッと自然と笑みが溢れ、袋を受け取った。
「お前の飯は何でも美味いだろう、有り難く頂くよ。」
ポンポンと頭を撫でてやると、恥ずかしそうに目を細めた美緒。
手を離すと笑顔で俺を見送ってくれて…
その顔を見た時、俺の心臓は大きく跳ねた感覚がしたが
気付かないふりをして部屋を出た。
FBIの仲間に迎えを頼んだ場所まで歩き
車に乗ったところで美緒の作ってくれた握り飯を食べた。
「…何が味の保証は出来ないだ、
すごく美味いじゃないか。」
「ん…?何か言ったか?」
「いや…何でもない。」
朝飯を食べるだけでこんなに元気が出るとはな…。
一睡もしていない体は怠く感じていたが
アイツの笑顔と朝飯のお陰で体が軽くなった。
心の中で美緒に礼を言い
車に乗っている間、少し寝ようと思い目を閉じた。