第9章 恐怖
その日もいつも通り仕事を終えてから美緒を学校まで迎えに行った。
学校の裏口でコンクリートの壁にもたれ掛かりながら一服していると
美緒がこっそりと裏口から出てくる。
誰にも見られないように警戒し、俺に駆け寄ってくるその姿はまるで小動物のようで思わず笑みが溢れる。
仕事で疲れている時も、美緒のふわっと笑った顔を見ると気分が安らぐんだが…
今日の美緒の顔はいつもより覇気がなかった。
夜は眠れなかったんだろう、と指摘すると図星だったようで
今日は早めに美緒を休ませようと思い、晩飯は外で買ってから帰ることにした。
そしてアパートに着いてポストを覗くと
久しぶりに見る差出人が書かれていない白い封筒。
それを見た瞬間、美緒はビクッと肩を震わせ
恐怖に歪んでいる表情に変わった。
俺はこいつのそんな顔は見たくなくて
部屋に入ってから一旦視界に入らない場所に封筒を置いた。
食事や風呂を済ませてから2人でソファーに座り
手紙を見ることにしたが、何となく嫌な予感がして
美緒には見なくてもいいと提案したが一緒に確認すると言ってきた。
本当は怖くてたまらないはずだが…
やはりコイツは馬鹿な女だな……
俺の嫌な予感は的中してしまい、
封筒の中身はズタズタに切り裂かれた美緒の写真と
殺意がこもっている手紙…
やはり見せなければ良かったと後悔し
すぐに封筒の中に写真と手紙をしまったが、時すでに遅しで
美緒は目を瞑り、ガタガタと震えながら自分自身を抱きしめていた。
浅い呼吸を繰り返し、目から涙が流れ出したのを見た時
美緒を自分の腕の中に閉じ込めていた。
美緒の泣き顔を見たくなくて
落ち着くように背中を叩いていると
美緒は俺の胸に頬を寄せ、背中に腕を回した。
…まるで俺と離れたくない、と言われているようで
俺は無意識に美緒を抱き締める力を強くしていた。