第9章 恐怖
side 赤井
美緒の警護をするようになってから数日が過ぎたが
ストーカーは俺と美緒が一緒にいるところを見たのか
警戒して一切近づいて来なくなった。
早く犯人を捕まえてあいつを安心させてやりたいが…
この件が解決したら
美緒に会うことも無くなってしまうのか、と考えるとなんだか複雑な気持ちになった。
美緒は警護してくれているお礼だと言って毎日飯を用意してくれるんだが…
あいつの作るものは相当美味くて驚いた。
あまり食を気にしない俺だが
美緒の料理は毎日でも食べたくなるものだった。
こんなに料理上手な女なら
男が放っておかないだろうと思うんだが…
彼女に恋人がいないと聞いて、どこかホッとしている自分がいた。
一緒に過ごすようになって
彼女に惹かれ始めていることは自覚しているが
こんな状況で美緒を困らせる感情など持ってはいけないと自分に言い聞かせている。
それに俺は……
もう二度と大事な女を作らないと決めている…。
…その日は久しぶりに夢を見た。
その夢には組織に殺された俺の元恋人、宮野明美が出てきて
久しぶりに会う俺に美緒のことを必ず守れと説教をしてきた。
自分の二の舞には絶対させるなと念を押されたところで
スマホのアラームが鳴り目を覚ました。
ゆっくり起き上がり窓の外を見ると空は少し明るくなっている。
着替えを済ませ、身支度を整えてから玄関に向かう途中で
美緒がいる寝室の扉を一度チラリと見てから部屋を出た。