第58章 褒美
「…美緒、早く行くぞ。」
『う、うん…じゃあしんのすけ君、行こっか。』
「俺、お姉さんと手繋いで行きたいー!!」
『あははっ、いいよ。
もうはぐれないようにしっかり繋いでおこうね!』
「やったあー!」
「…。」
…ムキになるな、相手は子供だろう。
頭ではそう分かってはいるが
俺の隣にいる美緒はその子供を可愛く思っているようで、5歳児の小さな手を優しく包むように手を握っている。
なんだかそれがすごく面白くなく、
俺は空いているもう片方の美緒の手を握った。
『っ、え…す、昴さん?』
「俺と手を繋ぐのは嫌なのか?」
『嫌じゃない、けど…しんのすけ君が見てるよ…?』
「別に構わんだろう。」
我ながら大人気ないとは思うが
こいつと手を握っていいのは俺だけだ。
子供だから仕方なく繋がせてやっているが
5歳児のくせに下心があるのは読み取れる…
だからこのガキには美緒は俺のだと
見せつけてやりたくなった。
そんな俺の考えに気づいているのか
そのガキは半歩前を歩きながら俺の方を睨んできている…。
「ねぇねぇお姉さんっ!お名前なんて言うの?」
『私?私は美緒っていうの。』
「美緒お姉さんかー!可愛い名前だね!」
『ふふっ、ありがとう。
しんのすけ君もかっこいいお名前だよ?』
「ほんと!?うれしいっ!!
美緒お姉さん!今度俺と2人でデートしない!?」
…このガキ、いい加減にしろ。
恋人である俺を目の前にして美緒をデートに誘うなんて
一体どういうつもりだ…
しかも美緒は本気にしていないのか
デートに誘われたにも関わらずニコニコと笑っていた。
「おい、美緒は俺の女だから
デートになど誘うんじゃない。」
『!!ちょっと昴さん…相手は子供だよ?
そんな間に受けなくても…』
「子供だろうが男は男だ。」
美緒に惚れている男を対処するのは
ただでさえ安室くんだけで手一杯なんだ…
これ以上敵が増えてたまるか。