第9章 恐怖
私たちは帰宅途中にあるお弁当屋さんで晩ご飯を買い
アパートまでの道を並んで歩いた。
赤井さんは足が長いから歩くのは私より早いはずなんだけど
いつも私の歩幅に合わせて歩いてくれるんだ。
それにさりげなくいつも車道側を歩いてくれるし
私を守ってくれていることが実感できてとても嬉しくなる。
帰り道の会話は多いとは言えないけど
私が話しかければ必ず反応してくれるし
赤井さんの低い声は聞いててとても心地良い。
ストーカーのことは早く解決させたいけど
赤井さんと会えなくなるのは嫌だな…なんて、不謹慎なことを考えてしまう。
それに赤井さんが呟いた明美さんって人……
2人は一体どんな関係なんだろう…
あれこれ考えているとアパートに到着し
赤井さんと一緒にポストの中を覗くと
久しぶりに差出人が書いていない白い封筒が入っていた。
「…。」
私の代わりに赤井さんがその封筒を無言で取り、部屋に入った。
一旦その手紙は視界の入らない場所に置かれてたけど私は気になっちゃって…その手紙が置かれた場所を見つめていると
赤井さんは私の頭に手を置いた。
『赤井さん…?』
「先に飯にしよう。腹減っただろ。」
『……そうですね。』
手紙の中身は気になるけど
今見てしまうと気分が悪くなって食事どころじゃなくなると思い、私たちは夕食を済ませた。
そして交代でお風呂に入ったところで
2人でソファーに腰掛けて近くのテーブルにその封筒を置いた。
「美緒、無理して見る必要はないぞ?」
『大丈夫ですよ。それより早く確認しましょう。』
きっとまた私の隠し撮り写真と
気持ち悪い言葉が書いてある手紙だろうと思って
赤井さんに中身を取り出して貰ったけど…
その中身はいつもの物とは全く異なるものだった。
「!!」
『やっ…!』
封筒に入っていたのは確かに私の写真だったけど
それはズタズタに切り裂かれていて、
白の便箋には赤いペンで[殺す]の文字…
赤井さんはすぐにその手紙と写真を封筒にしまってくれたけど、すでに私の目に焼きついてしまっていて、体がガタガタと震え出した。