第57章 綺麗
あまりの綺麗さに絶句していたけど
スタッフの人に腕を引かれ、
ドレスインナーから着るように言われた。
「ごめんね美緒。
先生は一度言い出したら絶対曲げないって有名で…」
『ううん…別に紗栄子が悪いわけじゃないから
謝る必要なんてないよ…』
でも…
こんなに綺麗なウェディングドレスを
モデルでもない一般人の私が着ていいんだろうか…
頭の中で混乱したまま何も言えず
スタッフの人に促されて大人しくドレスを見に纏った。
「うわぁ…!!美緒!
すっごく似合ってるよ!めっちゃ綺麗!!」
『え…ほんとに…?』
「本当だって!ほら!鏡見てみなよ!!」
肩を掴まれてくるっと体の向きを変えられると
本当に自分なのか疑いたくなるような姿が映っていた。
「本当にお似合いですよ!」
「うんうん…!さすが穂積先生!
若山さんにこのドレスが似合うってすぐ見抜いたのね!」
『あ、ありがとう…ございます…』
私が着ているこのドレスはAラインスタイルで
ウエストラインからゆるやかにスカートが広がっていて
スパンコールのかがやきもあり
優雅と優美であふれるデザインだった。
「時間がないので、次はヘアセットです。
こちらに座ってください。」
『あ…はい…』
後ろ姿も撮影する為、髪も綺麗に纏め上げられて
ドレスに合わせて一応派手じゃない程度のメイクもさせられた。
そして再び鏡を見ると
本当の花嫁みたいに変身した姿になっていた。
「準備できましたね!では撮影場所に戻りましょう!」
「ほら、行くよ美緒。
あんたの彼氏の昴さんにその姿見せて驚かせちゃお!」
…なんか紗栄子楽しんでない?
でも…赤井さんも私のこの姿を見たら
綺麗、って思ってくれるかな…。
代役が務まるかどうかはわからないし、かなり不安だけど…
昴さんに褒めてもらえるかも、と考えると
何とかなるような気に変わり、私はスタッフの人達と紗栄子と共に、ドレスを踏まないよう細心の注意を払いながら撮影場所に向かって歩き出した。