第57章 綺麗

「誰でしょうか、あの女性。」

『さぁ…？有名な人なのかな…』

「あの人は世界的に有名なファッションデザイナーの
穂積 ユウコ先生だよ。普段はアメリカにいるんだけど
今回新しくデザインした衣装の撮影をするから
わざわざ日本に帰国して来てくれたの。
私も挨拶に行ってくるね！」



紗栄子は私達に説明をした後
上品なスーツを着たその女性の元に向かって行った。



「ファッション業界では
きっとかなり有名なんでしょうね。」

『うん…。貫禄がすごい…』



ファッションデザイナーなだけあって
上品な雰囲気が出ているし高貴な感じだけど
スタッフの人達やモデルさんと話す姿を見ていると
とても慕われているようだった。




「私がデザインした衣装の撮影は？
もう終わってしまったのかしら…」

「いえ、これからです。
もうすでに準備できているはずなんですが…
ちょっと確認して来ます。」



スタッフの1人が撮影現場から出て行こうとしたところで
別のスタッフの人が慌てた様子で現場に入ってきた。



「た、大変です！！
穂積先生の衣装を着るはずだったモデルさんが
ここに来る途中に交通事故に遭われて
病院に搬送されたそうです！！」

「ええ！？それでその人の容態は！？」

「幸い命に別状はないようですが骨折されたようで…
今日の撮影は無理かと…」



なんだか…大変な事が起きちゃったみたいだな…



スタッフの人達が慌てている様子を見ていると
私達の元に紗栄子が戻って来た。



「ごめん美緒、今日の見学はこれでおしまいでいい？」

『それは全然いいんだけど…撮影大丈夫なの？』

「うーん…今代わりのモデルを探してるけど
そんなすぐには見つからないと思うし
スタジオの使用時間も限られてるから…」

「別の日時に撮り直すことはできないんでしょうか？」


昴さんの提案にも
紗栄子は困ったように首を振っていた。


「穂積先生は今日の夜の便でアメリカに帰国するんです。
明日からファッションショーの打ち合わせで忙しいから
今日しかないんですよ…」



うわぁ…思ってたよりかなりの非常事態だ…。