第56章 返事 ✴︎
「俺の過去を聞いて…愛想を尽かしていないのか…?」
『え…な、なんで…?
今の話で私が愛想を尽かす理由ってあった…?』
「…救える命を救えなかった情けない男だぞ?
普通は許せないと思うだろう…。」
『確かに…組織の悪事を暴く為にスコッチさんが犠牲になったのは…すごく残念な事だと思うよ?
でも…赤井さんは何も悪くない。
例え安室さんや他の人が赤井さんを許さなくても
私は…赤井さんの味方だから!』
フッ…そうだった…
美緒はこういう奴だったな…
いつも俺の事を寛大な心で包んで癒してくれて…
俺に向けるその笑顔は、パッと花が咲いたように
とても眩しくて可愛らしい…
コイツの暖かい優しさに何度も安らぎを感じた…
そして…俺の全てを受け入れてくれる…
俺はそんな美緒を好きになったんだ。
『赤井さん…話してくれてありがとう!
内容はともかく、私の知らない過去の話を聞けて嬉しかった!』
本当にこいつは…なぜいつもこんなに純粋なんだ…
さっきまで涙を流していたのに
今は俺に笑顔を向けている……
美緒のことが好きすぎて…愛しくてたまらない。
「礼を言うのは俺の方だ…聞いてくれて感謝している。」
『ふふっ、これからも赤井さんの話
色々聞かせてね?』
「っ、美緒……。あ…」
『…?なに?』
「……いや…」
俺は今…美緒に何を言おうとした…?
こいつの事が心から愛しくて
今その気持ちを言葉で伝えようとしていたよな…?
『赤井さん…?あ、って何ー?』
「…。あ、むろくんには……
俺が話したことは黙っててくれ…。」
『大丈夫、言わないから…っていうか言えないよ。』
「そう…だよな…」
…咄嗟に誤魔化して言わずに済んだが
完全に無意識で口が動いていた。
俺はもう…そんな風になってしまう程美緒の事を…