第56章 返事 ✴︎
side 赤井
俺の過去を美緒に話すと決めて
以前組織にいたスコッチというコードネームの男を殺してしまったことを伝えると、分かりやすく動揺している美緒。
俺が過去にした事をこのまま話したら
美緒に嫌われてしまうかもしれない…
だがコイツとこれからも一緒に居続けたいと思った時から、いつかは話さなければならないと覚悟していた。
美緒には…
俺の全てを知って欲しかったんだ。
「悪い…こんな話聞きたくないよな…」
『ううん…。驚いたのは本当だけど…
赤井さんの口から最後までちゃんと聞かせて欲しい…』
「分かった…。
スコッチが公安のスパイだと組織にバレたことで…
俺が奴を始末するようにと命令されたんだ。」
あの時のことは今でも忘れたことは無い…
安室くんが俺を憎んでも仕方のないことだと思っている。
「だが俺もFBIから潜入していた同じスパイだからな…
最初からスコッチを殺す気はなく、逃すつもりだったんだ。」
『え…?じゃあ、どうして…』
「奴は俺から拳銃を奪い…自殺しようとしたんだ。」
『!!』
驚きながら俺の話を聞いている美緒に
あの時の事を詳しく説明した。
廃ビルの屋上で、スコッチが銃口を自分の心臓に当て
引き金を引こうとしていたのを止め、
俺がFBIだと素性を話し、奴から拳銃を取り上げようとした時…
屋上に駆け上ってくる足音が聞こえ
組織の追手が来てしまったのかと拳銃から手を離したその一瞬の隙をつき、スコッチが自分で引き金を引いたこと…
そして俺から拳銃を奪ったのは
胸ポケットにいれていた家族や友人のデータが入っていたであろうスマホを壊すためだったこと…
『それって…赤井さんが殺した事にはならないんじゃ…』
「救えるはずの命を救えなかった…
俺が殺したようなものだ。」
『そんな…』
「恐らくスコッチと安室くんは
親しくしていた友人関係だったんだと思う。
…俺達がいたビルに駆け付けてきた足音の主は……安室くんだったんだよ。」
『!!』
そう…
だから安室くんにスコッチが自殺した話を詳しく話せば
彼はきっと一生自分を責め続ける…。
だから…俺は…