第9章 恐怖
そして私たちは食事を終えてから
ストーカーについての話をすることになった。
「俺が美緒と帰るようになってから
尾けられている様子もないし、ポストに手紙を入れられることもない。だが今までの犯行から見て、簡単にお前を諦めるようには思えない。」
『そう…ですよね…。』
「もう少し様子を見よう。
もしストーカーが尾行してきたら、俺がすぐに捕まえてやる。」
『ありがとうございます。本当に…心強いです。』
赤井さんがいなかったら
私はきっと恐怖に押し潰されてずっと苦しみながら生活していただろう。
赤井さんと一緒に過ごすようになった私は
安心、という気持ちだけでなく胸がドキドキする気持ちも抱えていた。
こんな気持ちを持ってはいけないって分かってるのに
蓋をしようとすればするほど抑えきれなくなる…。
赤井さんは…私のことをなんて何とも思っていないのにね…。
その後
ストーカーが現れた時の約束事をいくつか決め、
話を終えたところで、赤井さんは先にお風呂に入りに行った。
私はいつもその間に自分の洗濯物を片付けるのが日課になっている。
流石に恋人同士ではないから
赤井さんは自分の着替えを私に洗濯させるのは悪いと思うらしく、いつも近くのコインランドリーで済ませている。
しかし私の部屋には少しずつ赤井さんの物が増えていって
なんだかそれが少し嬉しかった。
ベランダにある灰皿や、
ゴミ箱には空になったタバコの箱、
洗面所には二つ並んだ歯ブラシ、
赤井さんのスマホの充電器、
そしてお風呂に入る前に外していた彼のニット帽…
赤井さんの私物を見るだけで
胸がギュッと締め付けられるなんておかしいよね…。
片付け終わった洗濯物をぼーっと眺めながらそんなことを考えていると、お風呂上がりの赤井さんがリビングに戻ってきた。