第9章 恐怖
いつも学校の裏口に迎えにきてくれる赤井さんと一緒に
アパートまで歩いて帰る日々を過ごすようになってから数日が過ぎた。
ストーカーによる被害は今の所まだ何もない。
私はせめて赤井さんに何かお礼をしたくて
毎日晩ご飯を作ってるんだけど……
「美緒…お前本当にただの教師か?」
『え…!?あ、晩ご飯お口に合わなかったですか?』
「そうじゃない。
こんなに美味い家庭料理は食べた事がないからな。
店で食べるような味だから驚いたんだ。」
…そりゃあ前世で副料理長やってましたから。
ていうか赤井さんって鋭過ぎません!?
『えーっと…一時期料理教室に通ってたんです。
料理は私の趣味なので。』
半分は嘘だけど半分は本当。我ながらナイス言い訳!
…ちょっと罪悪感があるけど。
「そうか…
最近まともに食事を摂っていなかったからすごく助かる。」
『忙しくてもちゃんと食事は摂らないとだめですよ?
あと睡眠も大事です。』
「今のお前が言っても説得力ないぞ?」
『……ですよね。』
赤井さんが来る前までは恐怖に怯えて
食事も喉を通らなかったからな…
するつもりのなかったダイエットをしてしまったよ。
『自分1人に作るより
誰かの為に作る方が作り甲斐があります。』
「ふっ。なら俺は警護を引き受けた甲斐があったな。」
『っ……』
なんて優しい顔で笑うんだろう。
この数日間で赤井さんの色んな表情を見てきたけど
笑った顔が1番…
「美緒…?食べないのか?」
『っ!食べます食べます!』
「…やっぱり変な女だな、お前は。」
……赤井さんは意地悪な男です。
でも意地悪く笑ってる表情も
笑った時と同じくらいカッコいいんだよね…