第53章 詫言 ✴︎
ランチ用のカレーが完成したところで
私は帰宅しようと思ったんだけど
今日のポアロは多くのお客さんが来店し
すごく忙しそうで…そのまま手伝う流れになった。
洗い物をしていると聞こえてくるお客さんの声。
私の作ったカレーを美味しい、と褒めてくれるから、その喜びに浸っていると、1人の男性のお客さんから安室さんと恋人なのかと勘違いされて…
そして安室さんは、私の事を諦めていないなどと伝えてきた。
なんて言い返そうか困っていると
安室さんは榎本さんから伝えられたオーダーを作り始めていて、何も言えない雰囲気になってしまった。
どうしよう…
このまま何も返事をしないままでいいのかな…?
でも安室さんは私が赤井さんと付き合っているのを知ってるし、なんでそんな私に告白みたいなことをしたんだろう。
ひょっとして……揶揄ってるとか?
…ありえる。
この人すごく意地悪だし、
私の困った反応を見て楽しんでるのかも…
そう考えるとなんだかムカついてきた。
「すみません美緒さん、
そこのお皿取ってもらってもいいですか?」
安室さんが頼んできたのは
私がすでに洗い終えてタオルで拭き終わったカレーのお皿。
『…自分で取って下さい。
お客さんも大分減って来たので私はもう必要ないですよね?
そろそろ帰ります。』
「?美緒さん…?」
機嫌の悪い私を安室さんは不思議そうに見ていて
私は自分の鞄を取りにバックヤードへ向かった。
1人になったところで借りていたエプロンを外し
綺麗に畳んでから、カボチャカレーのレシピを細かく書き足し、机の上に置いたところで、安室さんが再び私の元へとやってきた。
「美緒さん、今日はありがとうございました。
沢山手伝ってもらってすみません。」
『…いえ、この間ご迷惑をかけたお詫びですので。
じゃあ私はこれで失礼します。』
鞄を持ってお店の裏口から出て行こうとしたら
安室さんは私の行く手を阻んできた。