第53章 詫言 ✴︎
『おはようございまーす…』
「あ!若山先生!お待ちしてました!
早速ですけどこっちに来てください!!」
『え!?ちょ、ちょっと…!』
お店に入るとすぐに榎本さんが駆け寄ってきて
私の手を取り、食材のストックが置いてある場所に連れてこられた。
「実は…このカボチャなんですけど…」
榎本さんが指を指した方に目を向けると
そこにはたくさんのダンボールが積まれていて
中身は全部カボチャなんだとか…
『いいカボチャですね!これがどうかしたんですか?』
「うぅ…実はこのカボチャを
あと1ヶ月で使い切らないといけないんです…」
『っ、1ヶ月!?』
ざっと見たところダンボールは10箱近くあって…
購入したのが約1ヶ月前で、かぼちゃの持ちを考えると
あと1ヶ月程で傷んでしまうとのことだった。
「丸ごとのカボチャは常温で2〜3ヶ月は保存できますが
このままだとあと1ヶ月の間に消費しきれそうにないんです。」
私達の後を追い、安室さんも食材置き場に入ってきた。
さらに詳しく話を聞くと、
なんでも以前榎本さんがカボチャを誤発注して
通常の10倍の数を頼んでしまったらしい。
その時は安室さんのアイデアで
なんとか使い切る事が出来たらしいんだけど…
「安室さんの考案してくれたメニューは
ニョッキだったんですけど…知ってますか?」
『はい、イタリアのパスタの一種ですね。』
さすが安室さんだなぁ…
ニョッキならカボチャと小麦粉以外の材料はほとんど使わないし、消費するにはすこく効率的だ。
「お客様の評判が良かったから
メニューに加えることになったんですけど
ここ最近は注文数が減ってきてしまって…」
あー…それはあるあるだよねー…
期間限定だとすごく売れるけど
定番メニュー化にした途端いつでも食べれるから注文する人が減る。
前世で料理人として働いていた時
総料理長と一緒に同じ事で悩んでいたから…