第53章 詫言 ✴︎
『お仕事頑張ってね!』
「ああ……美緒、何度も言うが何かあったら…」
『分かってる、ちゃんと連絡するよ!』
赤井さんはやっぱりポアロに行く私を心配してくれているようで、ずっとソワソワしている。
自分の事をこんなにも気にかけてくれる赤井さんの気持ちが嬉しくて…
私は先程用意したものを赤井さんに手渡した。
「?これは…?」
『お弁当作ったの!時間がある時に食べて欲しくて…』
「…!」
赤井さんは私が持っている手提げ袋をジッと見るだけで
何も言葉を発さず固まっていた。
『赤井さん…?』
「これを作る為に…早起きしたのか?」
『あ…うん…。ごめん、いらなかった?』
「馬鹿…
嬉しすぎて何を言えばいいのか分からないだけだ…」
『っ…!!』
その言葉に驚いていると腕を引かれて
気がつくと私は赤井さんの腕の中にいた。
「美緒…俺の為にありがとう…。」
『えっ、と…喜んでくれてる?』
「当たり前だろう…お前には頭が上がらないな…」
それはちょっと大袈裟過ぎるような…
でも赤井さんが喜んでくれるのは私も嬉しくて
しばらく抱き締められたままでいると
肩に手を置かれて身を離し、優しくキスをされた。
「お陰で仕事が頑張れそうだ。」
『っ、そ、そっか…良かった…』
当然のキスに照れていると
赤井さんは私の頭を一撫でして、いってくると笑顔で言い手提げ袋を片手に工藤邸を出て行った。
『うー…なんであんなにかっこいいんだろう…』
昴さんの顔だけど、仕草とか声とか全部かっこよくて…
しばらく玄関で悶絶していた私は
気持ちが落ち着いてからポアロに行く支度を始めて
時間通りに到着するように工藤邸を出た。
そしてお店の前に到着すると
いつものようにポアロの看板が出ていて、中を覗くと安室さんと榎本さんはすでにいるようで…私はドアを開けて店内に入った。