第53章 詫言 ✴︎
side 赤井
美緒のスマホに安室くんから電話がかかってきて
俺も一緒にいることを言い当てた彼は、
話があると言ってきた為、スピーカーをオフにして
美緒から少し離れた場所でスマホを耳に当てた。
「安室くん…美緒に何をさせる気だ。」
「話を聞いてなかったんですか?
本当にポアロで困った事が起きたので
美緒さんに手伝ってほしいんですよ。」
…確かに先程ポアロに勤めているウェイトレスの女性が
美緒に助けを求めて叫んでいたが……
「わざわざ美緒の手を借りなくても
君がいるなら十分だろう。」
「十分じゃないから美緒さんに手伝って欲しいんです。本当にあなたは嫉妬の塊ですね…」
…俺が許可を出すわけがないと分かっているのに
安室くんはこうやって美緒に電話をかけてきた。
つまり本当に料理絡みで何か困った事が起きたんだろう…
だが安室くんは美緒に惚れているし、
恐らくまだあいつのことを諦めていない…
そんな奴の元に
大事な自分の女を行かせられるはずがない。
「まぁ、簡単に美緒さんを貸してくれるわけがないとは思っていましたから……
取引をしませんか?」
「…取引だと?」
「美緒さんを貸して頂けるなら
僕は彼女に…組織の何を知ってるか今後一切尋ねません。…悪い話ではないでしょう?」
「…っ、」
確かに…美緒は安室くんに
組織の存在を知っていると見破られてしまった時
上手く誤魔化せず悩んでいた…
転生してこちらの世界に来た事を話す訳にもいかない為、その提案は悪くない内容だった。
「分かった…。だが約束は守ってもらうぞ?」
「あなたに言われなくても分かっています。」
渋々安室くんの提案に乗り美緒を貸すことに了承し
電話で話している俺を心配そうにチラチラと見ている美緒に一度目を向け電話を切ろうとした時…
「あ、そうだ。最後にもう一つ…
言っておきたい事があったんです。」
「…?」
まだ何かあるのか…と思ったが
俺は大人しく安室くんが話し出すのを待った。