第53章 詫言 ✴︎
『あ、あの時の事は
本当に申し訳なかったと思ってますけど…』
安室さんって嘘つきだから
また前みたいにポアロで2人きりになるなんて…
赤井さんが許すはずがないよ。
今は昴さんの顔をしてるけど
目つきが完全に赤井さんになるほどムッとしてるし…
「心配しなくても、明日は梓さんもいますよ。
ちょっと待って下さいね?」
『??』
スピーカーから安室さんの声が途切れて少し経つと
榎本さんと思われる女性の悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「若山先生ーーー!!
お願いです!助けて下さいーーー!!!!」
『「っ…」』
赤井さんと2人で榎本さんの助けを求める大きい声に驚いていると、またすぐに安室さんの声が聞こえてきた。
「分かって頂けましたか?」
『助けてって言われても…私は何をすれば……』
「それは明日説明しますので、
朝の7時半頃にポアロへきて下さい。」
いやいや、早くない!?絶対開店前の時間じゃん!!
そんな早くに行って一体何の用なの!?
意味が分からず戸惑いながら赤井さんの方を向くと
私を行かせるかどうか真剣に悩んでいる様子だった。
「…美緒さん、今は1人ですか?」
『へっ…あ…えっと……』
「ふっ、あなたは本当に分かりやすいですね。
近くにあの男がいるなら代わって頂けますか?」
「…。」
恐る恐る赤井さんの方を向くと
一度ため息をついた後、私のスマホを手に持ち
スピーカーをオフにして耳にスマホを当てて安室さんと話していた。
でも私から離れて話していたから
何を話していたのかは聞こえなくて…
そのまま電話を切り終えた赤井さんは
怖い、と思ってしまうくらいの不機嫌なオーラが滲み出ていた。