第46章 心痛
『ただいま戻りました…』
玄関から家の中に入り、靴を脱いでからも
赤井さんは私の所に現れなくて……
キッチンにいるのかな?と思いながら
リビングを通ってキッチンに向かうため
近くの扉を開けると、赤井さんはリビングのソファーで横になって眠っていた。
私が帰ってきた物音に気付かないまま眠り続けているから
きっとかなり疲れてるんだ。
アメリカから帰ってきた翌日から毎日遅くまで仕事してたみたいだし、きっと私が休みの日に一緒に過ごせるように
無理して仕事をしているんだろう…
赤井さんは優しいから
わざわざそんなこと私に言わないけど、何となくは分かってた。
ソファーで眠っている赤井さんを起こさないように
静かにキッチンに向かうと、美味しそうに出来上がったスープの鍋が置かれていた。
とてもいい香りがしていて、味見をしてみようと思い
スプーンで掬い口に含んだ。
『……美味しい…っ…』
作り方を教えたのは私だけど、
このスープはほぼ全部赤井さんが作っていた。
作り方は同じのはずなのに
先日私が作ったスープより、とても美味しく感じて…
あまりの美味しさに感動して
私の目から涙がポロポロとこぼれ落ちた。
『っ…ふ…ぅ……』
何で涙が出てくるんだろう…
私が泣く資格なんてないのに、拭っても拭っても
涙はとめどなく溢れてくる。
アーロンさんの言葉が今も頭から離れない…
私のせいでジョディさんを傷付けていると思うと
私は自分のことが許せない…
でも赤井さんと離れるなんてできない…
自分が傷付くことを恐れている
弱くて度胸のない自分が…嫌い…
いろんな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合い消化しきれないくて、ずっと胸が押し潰されるように苦しい。
今までこんな経験をしたことがない私は
今後どうするのが正解なのか分からない。
涙を拭いながら悩んでいると後ろから足音が聞こえてきた。