第46章 心痛
「美緒!ごめんなさいね、待たせちゃって!」
少し息を切らしているジョディさんは
私に対していつも通りの接し方だけど…
アーロンさんから言われたことが頭から離れなくて
私の心臓はずっと嫌な音を立てていた。
「美緒…?どうしたの?」
『っ、いえ!何でもないです!!
あ…これ、頼まれていた書類です!』
「わざわざありがとう、助かったわ!」
笑顔で私にお礼を言うジョディさんをとても見ていられず、私は彼女と目を合わせることも怖くなっちゃって…
そんな私の様子をジョディさんは不思議そうな目で見ていた。
「あなたなんか変よ?シュウと喧嘩でもした?」
『っ、いえ…そうじゃなくて…あの…ジョディさん…』
「ん?なに?」
今でも赤井さんのこと…好きなんですか…?
そう聞きたいのに、私の口は上手く動いてくれなくて…
仮に聞けたとしてもその返事を聞くことが怖い…
今までと同じように、ジョディさんと友人関係でいられなくなる気がしちゃったんだ。
『やっぱり…何でもないです!じゃあ私帰りますね!』
「そう…?じゃあ家まで車で送るわね?」
『だ、大丈夫です!ジョディさんお忙しいんですから
私のことは気にしないで下さい!それじゃあ…失礼します!』
私はジョディさんから逃げるように
ホテルの出口に向かって走り出した。
後ろから私の名前を呼ぶジョディさんの声が聞こえたけど
私は振り向かずにバス停まで走り続けた。
私はジョディさんみたいに強くない…
だから彼女の赤井さんへの気持ちを聞いたとしても
平常心でいられる自信がない。
私は弱いから…
誰かを傷付けているのを分かってて
自分だけが幸せになるなんて…
そんなこと…出来ないよ…
だからといって、赤井さんと離れることも出来ない…
結局私は
どうすればいいのか分からないままバスに乗り
赤井さんが待つ工藤邸まで帰ってきた。