第7章 瞞着
side 赤井
美緒を家に送ってから
俺は適当な場所で車を停め、懐からタバコを取り出し火をつけた。
タバコを吹かしていると思い浮かんでくるのは美緒の泣き顔で…
俺は自分で自分のした事を悔いていた。
ボウヤから言われていたように美緒のことを調べたが
組織との関わりはないようだった。
しかし、ベルモットの口癖を知っていたからには
完全なシロとは言えず…
多少強引ではあると思ったが
美緒に直接話を聞こうと思い、あいつの通勤途中の道で待ち伏せた。
美緒が組織とは無関係だと早く安堵したくて
いつもより厳かな雰囲気で車に乗り話すことになったが…
俺が挙げた奴らのコードネームを
酒の名前だと答えられた時、疑惑が深まってしまった。
美緒は…組織の一員なのか…?
そんな考えが頭の中をよぎり
俺が指摘したことによってあからさまに焦っている様子だった美緒に正直に話すよう脅したが、あいつは口を噤ぐことを貫き通した。
口を割らないことに対して苛立ちを感じた俺は
美緒を助手席のシートに押さえつけた。
…女から何かを吐かすには1番手っ取り早いやり方だからだ。
俺が体に触れると恐怖に怯えているのか
分かりやすくビクッと反応し
胸元を強く吸い赤い印をつけ彼女の顔を見たら
ポロポロと静かに涙を流していた。
やめろ……そんな風に泣くな…
美緒の泣き顔を見た時、
俺がかつて愛した女…宮野明美の顔が脳裏に浮かび
あいつの泣き顔と重なって見えて…
俺は無意識に美緒を抱き締めていた。
俺がこの手で泣かせたくせに
こいつの泣き顔は見たくないと思ってしまったんだ。
美緒には…
この前見た時のような笑った顔の方が似合っていたから…
こいつには…笑っていてほしい。
なぜそう思ったのか…
その理由は認めたくなかった。
美緒はしばらく俺の腕の中で涙を流し続けていたが、俺がした酷い仕打ちに対して責めるようなことは何も言わなかった。
怒りを露わにしてくれれば俺の中の罪悪感も消えてくれるんだが
美緒は最後まで俺に文句を言うことはなかった。