第7章 瞞着
私の涙を見た赤井さんは私の手の拘束を外して
腕を引っ張り抱き起こした勢いで私の体をギュッと抱きしめてきた。
『ふ…ぅ…っ』
「美緒…悪かった。」
私を抱きしめたまま囁く赤井さんの声は
先程の冷たい声とは違い、温かみのあるものに変わっていた。
涙をポロポロ流しながら啜り泣く私から身を離した赤井さんは
私の頬に手を伸ばし涙を拭った。
「頼むからもう泣くな。
お前の泣き顔は……見たくない。」
…自分で泣かせた癖に何を言っているんだろう。
貴方のせいだと罵ってやりたいのに
声だけじゃなくて、私を見つめる赤井さんの瞳が鋭いものから目尻を下げて困ったような目つきに変わっていたから……
そんな赤井さんを見たら何も言えなくなってしまった。
その後も赤井さんに抱き締められたままひたすら涙を流していた私だけど、少し経つと涙は引っ込み、赤井さんは私から離れた。
「…家まで送る。」
そう呟いた赤井さんは助手席のシートを起こし
私のシートベルトをつけた後、運転席に座り直して車を発進させた。
車の中での会話は無く、私はずっと俯いていた。
どうして赤井さんがあんな事をしてまで
私のことを知ろうとしたのか頭の中で考えたけど
頭の悪い私には結局何も分からないままで
気がつくと私のアパートに到着していた。
『送って頂いて…ありがとうございました。』
「…ああ。」
シートベルトを外し、車から降りるとすぐに
赤井さんの車は走り去って行った。
『…あれ?何で赤井さん…私の家知ってるの?』
教えた覚えはないのに……なんで!?
聞きたくてもすでに車は走り去った後で、連絡先も知らない。
分からない事がまた一つ増えてしまい
私は自分の部屋に入ってからもずっと頭を抱えていた。