第7章 瞞着
「単刀直入に聞く。お前は組織の人間なのか?」
『そ、組織って…何のことですか?』
「…シラを切る気か。」
目の前には端正な顔立ちをした赤井さん、
綺麗な瞳に見つめられながら彼の低い声が響く。
平静を装っている私だけど
心臓がドキドキと激しい音を立てていてかなりうるさい。
正直に全てを話してしまいそうになったけど
必死で理性を繋ぎ止め口を噤んでいると
助手席のシートが赤井さんの手によって後ろに倒され、赤井さんは私を見下ろしてきた。
『えっ…!?赤井さん!?』
「騒ぐな。」
たった一言そう言われただけで、私の体はまたビクッと震え
そんな私の様子を見た赤井さんは私の耳の輪郭を指でなぞってきた。
『!!やめっ……』
「耳、弱いんだな。」
くすぐったさに身を捩り
赤井さんの手を掴んで抵抗しようとしたら、私の両手は彼の片手一つで頭上にまとめ上げられてしまった。
『赤井さんっ!やめてください!!』
「正直に話せば…やめてやる。」
『…っ、やっ…ぁ…』
耳を撫でられた後、首筋をゆっくりと撫で、
鎖骨あたりに到達したと思ったら
胸の谷間が見えるように私の服を指でグイッとずり下げられた。
『やだっ…!やめて…!』
足をジタバタさせてやめて欲しいと懇願しても
赤井さんはそんな私を無視して、露わになった胸元に唇を寄せて吸い付いた。
『い、や……』
赤井さん…なんで……?
なんでこんな事するの…?
本当に…私のことを組織の人間で敵だと疑ってるの…?
あなたは…女の人に平気でこんな事ができる人だったの…?
…分からない。
赤井さんのことが分からないよ。
ちくっとした痛みを感じ唇が離れると
そこには赤い鬱血痕が残っていた。
『っ…なんで……』
その時見た赤井さんは
まるで何とも思っていないような無の表情で…
その表情を見た時
以前見た赤井さんの笑顔が目に浮かんだ。
『赤井さん…やめて……』
「…っ、」
気がつくと私の目からは涙が溢れていて
両腕を押さえられているから拭うことすら出来ず
涙は目尻から耳を伝い、助手席のシートには私の涙の染みが出来ていた。