第44章 帰国
「……美緒か?」
『…っ、え……』
立ったままニュースの画面を眺めていた私は
声が聞こえた方へ顔を向けると
そこにはサングラスと帽子で顔を隠している赤井さんがいた。
『な……なんで…?
まだ飛行機に乗ってるはずじゃ…』
「予定より一つ前の違う航空便に乗ったんだ。
…早く帰りたかったからな。」
荷物を抱えながら少しずつ私と距離を詰めてきているのは
間違いなく赤井さんで……
私の名前を呼ぶ赤井さんの声を聞くと
本当に目の前にいるのが赤井さん本人だと分かり
私は急に足の力が抜けて、ペタッと床に座り込んだ。
「おい、美緒…どうしたんだ?
なぜそんなに泣いている…」
『だ、って…!赤井さんが乗った飛行機が
墜落するかもしれないって…!さっきニュースで…』
ニュースの画面を指差すと
赤井さんはすぐに納得した表情に変わった。
「あの飛行機ならもう大丈夫だ。
エンジントラブルは思ったより酷くなかったようで
東京まで無事に飛行出来る状態だと確認できたらしい。
先程従業員が話しているのを聞いたからな。」
座り込んでいる私の元に片膝をついてしゃがんだ赤井さんは
私の顔を見て笑っていた。
「お前は本当に泣き虫だな?
……ただいま、美緒。」
『う〜〜っ…お、おかえりなさい…っ!』
涙を流したまま赤井さんの体に抱き付くと
私を優しく受け止めてくれて抱きしめ返してくれた。
『ふ…ぅ……赤井さん…会いたかった、です…』
「俺もだ…美緒にすごく会いたかった。」
ゆっくり体を離すと、サングラス越しに私を見つめる
赤井さんの翡翠色の瞳と目が合って…
私達は人の目も気にせずに口付けを交わした。