第7章 瞞着
車に乗ってからの私達の間には重い空気が流れ
早くこの時間から解放されたくなった。
『話って……なんですか?』
早々に話を終わらせようと思い口を開くと
鋭い目付きのままの赤井さんが私に視線を向け
いつもなら綺麗だと思う翡翠色の瞳……
今日は目が合った瞬間、体がビクッと震えた。
「お前、酒は飲めるか?」
『……はい?いえ、私…お酒弱くて……
普段からあまり飲まないんですけど…』
いきなりそんな質問をされて戸惑いながらも正直に答えると、すぐに新たな質問が降ってきた。
「キール、あとはそうだな…
ヴァームース……なんだか分かるか?」
『??お酒の名前ですよね。それがどうかしたんですか?』
即答で答えると、
赤井さんの目つきは鋭いものに変わり私を睨みつけた。
「なぜ……普段酒を飲まないくせに酒の名前を知っている?」
『!!なんで、って…』
「ヴァームースは日本語でベルモット…
日本人には普通、そっちの名前で通っている。
酒を飲まない奴が知っているのは妙だ。」
……しまった。
確かにお酒は飲めないけど、前世が料理人だったから
お酒の名前も一通り覚えてて咄嗟に答えてちゃったよ…。
あ………
そこでまた一つ思い出してしまった。
レストランで働いていた時に
アルバイトの子とお酒の英語綴りを勉強した時に聞いたんだ…
赤井さんや江戸川くんが追っている
組織のメンバーのコードネームが…お酒の名前だったことを…
『お酒飲めなくても…名前くらいは知ってますよ。』
「誤魔化せると思うな。」
『っ、いたっ!』
強い力で手首を掴まれ、顔を歪めていると
赤井さんは運転席から私が座っている助手席に距離を詰めてきた。
近い距離に戸惑って視線を逸らすと、顎を掴まれ
無理矢理視線を合わせられてしまった。