第7章 瞞着
私が嘘をついていない事は
ちゃんと彼にも伝わったと思う。
だってさっき言った事は私の本心だから……
嘘を見抜くくらい探偵なら余裕だろう。
いつか…江戸川くんが工藤新一だと知ってるって話せる日も来るかもしれない。
でもそれは今じゃない。
いずれ話す事にはなりそうだなぁ、と考えながら歩いていると
道路の角を曲がった先に、1人の男性が壁に背を預けて立っていた。
『……赤井さん?』
いつものようにニット帽を被り
黒のライダースを羽織った赤井さんは私が名前を呼ぶと
ゆっくりと私の方へ向かって歩いてきた。
「お前に話がある。一緒に来てくれ。」
……。
なんだか…
今まで会った時の赤井さんと雰囲気が違う。
ひょっとしたら彼も…江戸川くんと同じように
私を組織の人間だと疑っているのかな…?
もしそうだとしたら……
…悲しい。
私がまた会いたいと望んでいたのは
もっと優しい眼差しを向けてくれる赤井さんで…
私の頭に優しく手を置いた時のような
穏やかな雰囲気の彼に会いたかったのに…。
赤井さんは私に背を向けて歩き出し
用があると言って逃げようかとも思ったけど
そんなことを言える度胸は私にはない。
だって彼はFBI。
私が逃げ出したとしてもきっとすぐに捕まえられちゃう。
大人しく後ろをついて行くと
恐らく彼の愛車である左ハンドルのシボレーの助手席に座るように指示された。