第43章 謝意
「だ、大丈夫ですよ先生!
もし先生が昴さんに振られても
世の中にはたくさんの男性がいるんですから!」
「ちょっと光彦くん!
そんなこと言ったら若山先生が余計に落ち込んじゃうよ!」
「そうそう!灰原の言ってることは間違ってねーけど
絶対そうとは限らないじゃんか!」
『え゛……』
「おいオメーら!
フォローするならもう少し上手いこと言えよ!」
…子供達は私を元気づけようとしているみたいだけど
私の心はますます沈んできてしまった。
『うん…みんな……気をつけて帰ってねー…』
「「「……。」」」
子供達に言われた事が頭から離れなくて
私はみんなに挨拶をした後、フラフラした足取りで職員室に向かった。
自分のデスクに座ってからも
特に灰原さんが言ってた言葉ばかり考えてしまって…
その後はとても仕事に集中できなくて、早めに仕事を切り上げて私は帝丹小学校を出た。
…そしてそのまま私の足は工藤邸に向かっていた。
『…明日も仕事だから……顔だけ少し見て帰ろう…』
赤井さんの事を疑っているわけじゃないけど
自分があの人の特別なんだって再確認すれば
灰原さんが言ってたことなんて気にしなくなるはず…
そんな事を考えながら足を進めていると工藤邸に到着し
呼び鈴を鳴らした。
少し待つと
鍵は空いてるから中に入ってこい、と赤井さんに言われ
私は扉を開けて玄関に入った。
『お邪魔しまーす…』
扉をパタンと閉めるのと同時に
赤井さんが素顔のまま私の元に歩いてきた。
…なぜか少し大きな鞄の荷物を抱えて。
『?どこか行かれるんですか?』
「あぁ、実はな…アメリカに帰る事になったんだ。」
『っ、!?』
な、なんで…?
なんでそんな急に…?帰国って…?
「急に決まってお前に連絡する時間の余裕なくてな…
悪かった。」
悪かったって…
なんでそんなに平然としながら言えるんですか…?
私とはもう会えなくなっても平気ってこと…?
私との関係は…日本にいる時だけの期間限定だったの…?
それとも灰原さんが言ってたように
本当に急に私に飽きちゃったとか…?