第43章 謝意
横浜でのデートの日以降、
私の左手首には毎日、赤井さんから貰った腕時計がついている。
今までは汚さないように休日しかつけていなかったけど
赤井さんは私の送った時計を毎日つけてくれているようで
私も同じように毎日つけることにした。
そうする事で
会えない時でも赤井さんと一緒に同じ時間を過ごしているみたいで…ふとした時にいつもその時計を眺めている。
「あー!
若山先生またその時計見てニヤニヤしてるー!」
『へっ…!?』
下校時間になり、自分のクラスの生徒達に挨拶をして
廊下に出てから時計を眺めている時、吉田さんの声が聞こえて、顔を横に向けた。
「その時計、ひょっとして昴さんからの贈り物ですか?」
「先生最近毎日その時計つけてるもんなー!」
…やっぱりこの子供達は探偵団を結成しているだけあって
めちゃくちゃ鋭いし、本当によく見てる…。
まぁ、私が分かりやすいだけなのかもしれないけど…
「若山先生がなぜ昴さんの事を好きなのか知らないけど
男って生き物は急に心変わりするものよ?
愛想尽かされないように気をつけることね。」
「おい、灰原…お前な……」
…赤井さんが……心変わり…
『……。』
そんな事絶対にない!
…はず。
普段はすごくクールな赤井さんだけど
この前のデートの後だって、何度も私のこと好きって言ってくれたし…!
でも、待って…
赤井さんってFBI捜査官だし
いつまでも日本にいるわけじゃない…よね?
もし本国のアメリカに帰国する事になったら
私とは……
『……お別れ…ってこと…?』
「せ、先生?」
灰原さんの言葉を聞いて急に不安な考えが頭の中を占めてしまった私は、江戸川くんの心配してくれている声は耳に入らなかった。
ど、どうしよう…
先のことはあまり考えていなかったけど
私と恋人でいるのは赤井さんが日本にいる間だけなのかな…
…さっきまで腕時計を見てただけで幸せな気持ちだった私は
一転してかなり暗く沈んでしまった。