第41章 返礼
「おい美緒…こっちを見ろ。」
『……無理です。』
周りに誰もいないのをいい事に
赤井さんの口調になっている昴さんは私と目を合わせようとしてくるけど、意固地になってずっと目をキョロキョロとさせていたら…
『っ…ん!』
昴さんの唇と私の唇が合わさっていて
キスをされているんだと理解するのに少し時間がかかった。
『っ、す、昴さん…?』
唇が離れて彼の名前を呼ぶと
口角を少し上げて微笑んでいるようだった。
「他の女に嫉妬している美緒…最高に可愛いな。」
『〜〜〜っ!!もう!!昴さんのバカ!』
こんな私のどこに可愛さなんてあるんだろう。
素直に嫉妬してるってことすら言えないのに…
顔の火照りを感じながら昴さんを睨んでいるけど
彼は嬉しそうにニコニコと笑ってる。
「いつも俺ばかり妬かせられているからな?
今日はいいものを見せてもらったよ。」
『!!もうやめて下さい…!』
…恥ずかしくて死にそうです。
私の嫉妬してる表情を見れて満足したであろう昴さんは
再び私の手を握り歩き出した。
単純な私は
手を繋がれただけで、さっきまで感じていた黒い嫉妬心はどこかに行ってしまい、モヤモヤが晴れたような気分になった。
だってこうやって手を繋いでいれば
私が昴さんの恋人だって周りに見てもらえるから…
そんな優越感に浸りながら歩いていると中華街を抜けて
今度は昔ながらの雰囲気が漂う商店街にやって来た。
服や雑貨の店舗が並ぶ通りを順番に見て回り
たくさん歩いたところでいつの間にか日が暮れかかっていて
その頃には私の機嫌もすっかり治っていた。
『楽しい時間って過ぎるのあっという間ですね…』
「ははっ、楽しんでもらえたようで良かったです。
それよりこの後ですが、
晩ご飯も横浜で食べて行きませんか?」
『そうですね…せっかく来たので
ご飯食べたら夜景も少し見て行きましょう!』
私達は車を停めてあるパーキングまで戻り
車で横浜のシンボルである70階建ての超高層ビルにやって来た。
そこはオフィスやホテル、ショッピングモールを核に
展望フロアや多目的ホールなど多彩な施設を併設している。