第41章 返礼
そして私の肩に手を回した昴さんは…
「すみませんが、私にはこんなにも可愛い恋人がいるので
写真を撮ったり連絡先を教える事はできません。
では、失礼します。」
昴さんはそのまま私の手を握って歩き出し、
去り際にチラッと女性達の顔を見たら
私と同じようにずっと驚いた表情のままだった。
…だって誰がどう見ても私より
あの女性達の方が可愛くて綺麗だったから…
でも私をすぐに見つけてくれたのが嬉しくて
お礼を言おうと口を開きかけると、先に昴さんが話し出した。
「なぜ離れようとしたんですか?
私が声を掛けられていることに気付いていましたよね?」
『え…っと……飛び込んでいく勇気がなくて…』
私がもっと自分に自信が持てる人間だったら
すぐに駆け寄ってあの女性達を一掃できたかもしれないけど…私にそんな度胸はなかった。
『それに…あんな綺麗な人達と話している昴さんを
視界に入れたくなかったんです…』
この理由が9割を占めている。
頭の良い赤井さんのことだから
私が嫉妬してることに今の言葉で気付いたはず…
俯きながら手を引かれて歩いていると
人気のない通路まで移動していた。
そこでようやく手が離されて
昴さんは私の方へと体を向けていけど、私は俯いたまま顔を上げれずにいた。
「…美緒さん、こっちを見て下さい。」
『っ、嫌です…醜い顔してるから見られたくない…』
嫉妬するのなんて
杯戸中央病院で宮野明美さんの話を聞いた時以来だ…
頭の片隅でその時のことを思い出していると
両頬に手を添えられてグッと上を向かされた。
「ふっ…妬いているのか?」
『!!だったら…悪いですか…!?』
なんて可愛くない言い方…
いくら嫉妬しているからって昴さんは何も悪くないのに…
プイッと顔を背けようとするけど
頬に添えられている昴さんの手の力が強すぎて、せめてもの抵抗で目線を逸らし続けた。