第41章 返礼
「本当に危ない時は大声で誰かに助けを求める事、
いいですね?」
『ふふっ、なんだか昴さんの方が私より先生みたいです。』
「…真面目に言ってるんですが?」
真剣な表情の昴さんから
私のことを心配してくれている気持ちが伝わってきて…
昴さんの言う通りにすると約束させられた。
それから少し談笑しつつベンチで休憩をし
飲み物を飲み終えたところで再び中華街を散策することになった。
その途中、近くにトイレを見つけたので
私達はそれぞれトイレを済ませる事になったんだけど…
『混んでたから遅くなっちゃったな…』
思ってたよりも女子トイレは人が並んでいて
時間がかかった事を昴さんに謝ろうと思って外に出ると、
…数人の綺麗な女性達に囲まれている昴さんを見つけた。
「お兄さんすごくかっこいいですね!」
「ほんとほんと!一緒に写真撮りたーい!」
「ついでに連絡先も教えてくれませんか?」
目をハートにしながら昴さんに話しかけている女性達…
確かに昴さんって誰が見てもかっこいいし
1人でいるところを見たら誰でも声掛けたくなっちゃうよね…
それに昴さんも綺麗な女性に声を掛けられて
少なからずいい気分をしているはずで…
それでもやっぱり自分の恋人があんな風に
声を掛けられているのはいい気がしない…
自分の心の中が黒く澱んでいくのを感じた。
女子トイレが混んでなかったら
あんな風に声を掛けられることもなかったかもしれないのに…
モヤモヤと色んなことを考えていると
女性のうちの1人が昴さんの腕に触れていて…
『っ…』
いやだ……
さわらないで…
昴さんは…赤井さんは私の恋人なのに…!
でもそんな事を言える度胸がない私は
他の女の人に触られている昴さんを見たくなくて
パッと目を背けて、その場から離れようとしたけど…
「美緒さん。」
『?…え?』
名前を呼ばれて振り向くと
いつの間にか私のそばに昴さんが立っていて…
先程の綺麗な女性達も驚いた顔をして私達を見ていた。