第40章 恋慕 ✴︎
何度か1人で入っている工藤邸のこの浴室は
2人で入っても余裕なくらい広くて……
恥ずかしい気持ちがずっと残ったままの私は
体を隠しながら赤井さんの方を見ないように俯いていた。
「美緒、体洗ってやるからここ座れ。」
『!?じ、自分で洗えます…!』
「お前に拒否権はないと言っているだろう。」
なんて横暴な…!
ひたすら嫌だと伝えても
赤井さんの力に勝てるはずもなく…
無理矢理浴室の椅子に座らされて、温かいシャワーをかけられた。
『うぅ…恥ずかしくて死にそうです…』
「そんな死因はこの世にない。心配するな。」
『別に心配はしてません!』
「分かった分かった。髪も洗ってやるから怒るな。」
とても楽しそうに私を揶揄う赤井さん…
逆らうことは何一つ許されず体を隅々まで洗われ
髪もトリートメントまでしてもらった私は
先に浴槽に浸かることになった。
その間、赤井さんが自分で体を洗ってる姿を何度かチラッと見たけど、鼻血がでそうなくらい色気が凄すぎて…
きっと水も滴るいい男、って赤井さんみたいな人を言うんだろうな…
そんな事を考えていると、洗い終えた赤井さんも浴槽に入ってきた。
水位が上がり、私の向かいに座った赤井さんは
髪をかきあげながらお湯の気持ち良さに息を吐いていて…
その仕草もカッコよくて、とても見ていられず、私は赤井さんに背を向けた。
「美緒、こっち向け。」
『……。無理です…』
「全く…仕方のないやつだ。」
『…っ、わ!』
赤井さんが動いたのを水音で感じていると
後ろから両肩を掴まれて体ごと後ろに引き寄せられ
赤井さんの足の間に座っている体勢になってしまった。
「せっかく一緒に風呂に入ってるのに
離れていたら意味がないだろう。」
『だっ、て…』
後ろから赤井さんに抱き締められている状態で
私の背中には赤井さんの胸板が当たり
お腹周りには私が逃げないように腕が回っている…
互いに裸でこんなに密着しているのに
平常心でいるのなんて無理だよ…。