第39章 復仇
「死ぬ前に一つだけ伝えたいことがあるんだが…
君達は誤解をしている。
イアン・スチュアートを殺したのは…我々FBIではない。」
「この期に及んで…言い訳でもするつもり?」
「俺の上着の左ポケットにスマホが入ってる。
そこには5年前の事件の捜査資料がメールで送られてきている…確認してみろ。」
ダニエルさんとソフィアさんは目を合わせて
私に銃を突きつけていたダニエルさんが
赤井さんの方へと向かって行き
彼の上着からスマホを取り出して中身を確認していた。
「っ、なんだよ…これ…」
「兄さん…?どうしたの?」
ダニエルさんは赤井さんのスマホを見ると手が震え出し
ソフィアさんの声は聞こえていないようだった。
「5年前…君達の父親であるイアンは
確かに薬物の密輸に加担するという犯罪を犯した。
FBIがその現場に向かい、イアンを含めた数人を取り押さえようとしたのも事実だ。
だが彼を撃ったのは…
その場にいた薬物の運搬をしていた男の1人だ。」
『!?』
「っ、え……」
赤井さんはとても嘘を言っているようには見えなくて
ダニエルさんも赤井さんの話を否定しなかったから
きっとメールにも同じ事が書かれているんだろう。
「イアンは…FBIの捜査官が撃たれそうになったところを身を挺して守ってくれたんだ。
なぜそんな事をしたのか俺には分からないが…
きっと彼は優しい男だったんだろうな。」
「嘘よ……当時のニュースではFBIが射殺したって…!」
「FBIが犯罪者に守られたと世間に漏らすわけにはいかないと判断されたんだ。俺を含めたその場にいた捜査官達は反対したが
上の圧力が強すぎてな…」
確かに…本当の事を伝えたら
FBIの人達が世間からバッシングを受けることは明白だ。
犯罪者に命を救われただなんて
FBIの名誉にも関わるかもしれないから…。