第39章 復仇
「結局、その政治家は逮捕されて
俺達の父さんは金のために利用されて射殺された
哀れな男だと報道されていた…世間はそんな父さんを叩きまくってたよ。」
『…。でも、いくらお金を稼ぐ為とはいえ
あなた達のお父さんは犯罪を犯した…それは事実なんですよね?』
「そうね…でも私達にとっては
たった1人の父さんだったのよ…!!」
「俺達は大事な家族をFBIに殺されたんだ…
例え父さんが悪かったとしても
俺達の家族を殺した奴が憎い…!
絶対に復讐してやると決めて今日まで生きてきたんだ。」
きっとこの2人は父親を殺されてしまった日から
互いを支え合って生きてきたんだろう。
でも…
そんな復讐心に囚われていたら
この人達はずっと幸せになれないままだよ…。
「私達は父さんが殺された事件のことを徹底的に調べた。
父を撃ったのは誰か分からなかったけど
その時現場にいたFBIの捜査官の名前が判明した時
兄さんと決めたの…そいつらを全員殺してやるってね!」
『っ!!』
ソフィアさんはそう叫びながら懐から拳銃を取り出し私に向けた。
「赤井以外のFBIはすでに始末した。
あとはアイツだけだ…それで俺達の復讐は終わる。」
男性も同じように拳銃を取り出していて
弾が入っているかを確認しているようだった。
『一つ聞きたいんですけど…いいですか?』
2人は私の言葉に返事をしなかったけど
私はそのまま2人に尋ねた。
『復讐って…どんな気持ちですか?』
「…は?」
「どういう意味…?」
『私には…復讐したい人なんていないから分からないんです。
あなた達がどんな気持ちなのか…。だから教えて下さい…』
「人を強く恨む…暗くて真っ黒な気持ちってところかな。」
『じゃあFBIの捜査官を殺した時
その真っ黒な気持ちは少しでも明るくなりました?』
「っ、それは…」
『想像してみて下さい。赤井さんを殺した後のことを…
あなた達は彼を殺して復讐を果たしたら…幸せになれますか?』
私の言葉に2人は黙っていて何も答えなかった。
2人の様子からすると、もう分かってるはず…
復讐なんてするものじゃない…
復讐からは何も生まれないってことを…