第39章 復仇
「若山先生、私達は…あの男を殺す為に日本に来た。
あなたは人質です。」
ソフィアさんも男性と同様、私に冷たい目を向けていて…
この数日間、私が見ていたソフィアさんと同一人物だとは思えないくらいの変貌ぶりだった。
「さっきあの男に1人でここに来るよう伝えた。
それまで大人しくしてろ。」
赤井さんが……ここに…?
『来なかったら…どうするんですか?』
「自分の大事な女が人質にされているんだ。
来ないわけがないだろう。」
確かに赤井さんの性格上、助けに来てくれるとは思う。
本当に優しい人だから…
でも…ここに来たら殺されちゃうかもしれないのに…
私が捕まったせいで
赤井さんが殺されるのなんて…見たくない…
「若山先生…どうして私達があの男を殺したいのか
教えてあげましょうか?」
『っ…』
ソフィアさんは私のすぐ近くまで歩み寄り
体を屈めて私の目の前に顔を近づけてきた。
「あの男はね…私達の父さんを殺したの。」
『!!』
私達、ってことは……この2人…
「彼は私の兄さんです。
母親は体が弱くて、私を産んですぐに死んでしまったから
父さんが幼い私達を一生懸命育ててくれたの。」
「でも…父さんが1人で働きながら俺達を育てるのは
相当厳しかったと思う。金もかかるからな。」
確かに…いくら国の援助があったとしても
働きながら子供2人を育てるのなんて簡単な事じゃない。
それは日本でも同じだから…
「なんとか家族で助け合いながら生きてきたけど…
5年前、父さんは金を稼ぐ為に悪事を働いた…
俺達の為にな。」
「それは違法薬物の運搬の仕事…
当時FBIは、その薬物を扱ってる犯罪組織の黒幕が
ある政治家だと睨んでた…。取引現場を押さえるために
FBIの奴らが待ち伏せしていたの。
それで父さんは…逃げようとしたところで射殺された…
ただ私達の為に…働いてお金を稼ごうとしただけなのに!」
大きな声でそう話すソフィアさんから
彼女の辛い気持ちが伝わってきた。
でもどんな理由があったとしても
犯罪行為に加担したことには違いない…