第38章 危機
side 安室
ポアロでのアルバイトを終えて
自宅に帰宅しようと思い、僕は歩道を歩いていた。
いつもなら車で通勤しているが、生憎今は修理中だった。
「たまには歩いて帰るのも悪くないか………ん?」
道路を歩いていたら
歩道橋の階段の近くで人が群がっているのが目に入り
何かあったのかと思い、僕はそこに向かった。
「あの、すみません。何かあったんですか?」
「女の人が歩道橋の階段から落ちたみたいなんだ。
救急車は呼んだけど、意識がないらしい。」
野次馬の1人の男性に尋ね、教えてもらったところで
人の隙間から被害者の状態を確認しようしたら…
「え……美緒…さん……?」
少し離れたところから見た被害者の顔は
美緒さんによく似ていて…
「っ、すみません!通して下さい!」
見間違いだと思いたくて
僕は野次馬をかき分け彼女の元に近づいたが…
残念ながら間違いではなく、美緒さん本人だった。
「っ、美緒さん!しっかりして下さい!」
呼びかけても反応はなかったが、呼吸や脈拍は異常ない。
…恐らく脳震盪を起こしているんだろう。
「すみませんが、
この女性が落ちた所を目撃した人はいませんか!?」
野次馬の人達に声を掛けたが、
どうやら目撃者はいないようだった。
でも僕のそばにいた1人の男性は…
「落ちた所は見てないけど、この人が落ちた時
階段の上の方を見てたから…
たぶん誰かに押されたんじゃないかな?」
「!!その人の顔は!?見ましたか!?」
「い、いや…暗くて何も見えなかったよ。
走り去る足音みたいなのは聞こえたけど…」
その男性はそれ以上は何も分からないそうで
犯人の特徴なども見えなかったと言っていた。
…だがはっきりした事が一つだけある。
美緒さんは誰かに狙われて
階段から突き落とされたんだ…。
そう確信したところで救急車が到着し
僕は美緒さんの友人だと説明し、救急車に同乗して病院に向かった。