第36章 補佐
「それにしても若山先生って
本当にお菓子作り上手なんですね!
この前のシフォンケーキも米粉を使ったのがすぐ見破られたって安室さんから聞きましたよ?」
『あれはたまたまですよ!
お菓子作りは本当に奥が深いから…
知らないことの方が多いですし。』
梓さんの言葉に謙遜している美緒さんだが
ただの教師とは思えないほど料理には詳しい。
年齢もまだ25歳で僕より若いのに
今時の20代の女性にしてはとても珍しいと思う。
「ところで若山先生って、彼氏とかいるんですか?」
『え!?か、彼氏ですか!?』
「あ、その反応はいるんですね〜?」
『彼氏、というか……まぁ…好きな人はいます…』
顔を赤くしながらそう答えた美緒さんは
きっとあの赤井の事を思い浮かべているんだろうが
アイツの事を考えている彼女はあまり見たくない…
赤井を想う美緒さんはとても可愛らしいんだが、なんだかそれがとても悔しい。
それに彼女の表情から
あの男の事が本当に好きなんだって気持ちが
嫌と言うほど伝わってくるから……
ピピーーッ
2人の話に相槌を打ちながらそんな事を考えていると
オーブンの音が鳴り、生地が焼けたようだった。
『ちゃんと焼けてるかな〜……うん、いい感じだ。』
竹串を使って生地が焼けているか確認をした美緒さんは
ウキウキしながら型から生地を出して冷めるのを待っているようだった。
「美緒さん、あとはスポンジに
クリームチーズフロスティングを塗ればいいですか?」
『はい。スポンジはスライスして
中にクリームを塗ってサンドして下さいね。
表面にはほぐしたスポンジをデコレーションに使いましょう。』
「分かりました。
梓さん、後は僕だけで大丈夫なので
常連のお婆さんを呼んでもらってもいいですか?
せっかくなので試食して頂きましょう。」
「そうですね!すぐ連絡してきます!」
梓さんがバックヤードの方に行き
キッチンは僕と美緒さんの2人きりになった。