第36章 補佐
『?安室さん?何笑ってるんですか?』
「…いえ。なんでもないですよ。」
『そうですか…?じゃあさっそく始めましょうか!
あ、榎本さん。エプロンお借りしてもいいですか?』
「はい!どうぞどうぞ!」
梓さんからエプロンを受け取った美緒さんは
すぐにそれを身につけてカウンターの中に入り
手を洗って僕達に作り方を教えてくれた。
『まずはバターに砂糖を入れて混ぜて卵とサラダ油、バニラエッセンス、
ホワイトビネガーを入れます。
そして常温のバターミルクを加えてよくかき混ぜて…
薄力粉と塩とベーキングパウダーを混ぜたものをふりかけます。』
僕と梓さんに指示を出しながら
美緒さんも同じように隣で作っていた。
「若山先生も同じ物を作ってるんですか?」
『えぇ、まぁ…
ちょっと試してみたいことがあるんです。』
見たところ全く同じ手順で作っていて
特に変わったところは無く、僕と梓さんは2人で首を傾げた。
『混ぜ終わったらココアパウダーを入れてください。
ポアロにココアはあるんですよね?』
「はい!ドリンクのメニューにありますからね。」
『ではそれを入れてよくかき混ぜたら
水で溶いた食紅を入れて…
綺麗に混ざったところでスポンジ生地の完成です。』
その生地を型に入れている間に
美緒さんは僕と梓さんから少し離れたところで
赤くなった生地を嬉しそうにかき混ぜていた。
…だが、僕達の生地の赤色とは少し違っていた。
「若山先生、その生地は一体…?」
『種明かしは出来上がってからにしますから
今は内緒でーす。』
梓さんの質問に内緒だと言った美緒さんは
なんだかすごく楽しそうだった。
そしてスポンジ生地をオーブンで焼いている間
僕達はコーヒーを飲みながら少し休憩することにした。