第36章 補佐
「うーん…来てくれるかどうか分かりませんが
連絡してみます。」
恐らく僕が好意を寄せている事に美緒さんもきっと気付いているだろうし、僕に近づくなって赤井にも言われているはずだ。
あの男は美緒さんにかなりお熱のようだからな。
スマホから美緒さんの連絡先を探し
名前を見ただけで胸が高鳴った。
気持ちを落ち着かせるために一度だけ小さく息を吐き
通話ボタンをタップしてスマホを耳に押し当てた。
何度かコール音がした後、電話に出る音がして
すぐに美緒さんの柔らかくて優しい声が聞こえてきた。
『もしもし?安室さん?』
「急に連絡してすみません。今大丈夫ですか?」
『はい。今日は学校が休みなので
今スーパーに買い物に来ているところなんです。』
「そうでしたか。実はお願いしたいことがありまして…」
僕は先ほど梓さんと話した内容を伝え
ケーキ作りに協力して欲しいとお願いした。
『レッドベルベットケーキ…あのケーキは確か…』
電話の先でぶつぶつ何かを言っている美緒さん。
…どうやら手伝ってくれる気満々のようだ。
ちょうどスーパーにいる美緒さんは
足りないケーキの材料を買ってきてくれるらしい。
電話を切った後、
梓さんにも美緒さんが手伝いに来てくれることを伝え
ケーキ作りの準備をしていると彼女がポアロにやってきた。
「あ!若山先生!
来てくれてありがとうございます!」
『えーっと…榎本さん、でしたよね?お久しぶりです。』
両手に買い物袋を抱えている美緒さんは
梓さんに笑顔で会釈していて…
久しぶりに見る美緒さんは元気そうで安心した。
「美緒さん、お休みの日に来てもらってすみません。」
『いえいえ!
レッドベルベットケーキなんて可愛くて素敵だし
是非お手伝いさせて下さい!!』
…本当にこの人は料理が好きなんだな。
目をキラキラさせながら袋から材料を出してる美緒さんは
とても可愛らしくて…
自分の顔がニヤけてくるのが分かった。