第34章 水泳
永美さんの死亡推定時刻は
正午から午後1時半って言っていたから
その間にプールに出入りした3人の誰かが犯人なんだろうけど…
「遺体がずっとプールの底に沈んでいたら
手分けして捜した時に見つけているはずだし
それに誰にも気づかれずに遺体をプールの中央に
沈めるなんてことも出来ないだろう……
これはまさに不可能犯罪ってことになるが…
…ん?そういえば高木君はどこに行ったんだね?」
『あのー…警部さん,
高木刑事ならプールの方に行きましたよ?』
「プールで実験をするから来て欲しいって。」
「なんか大きな水槽も運んでました。」
「ったく…何を勝手なことをやっとるんだ高木くんは…」
目暮警部の後を追って
私達も容疑者の人達と一緒にプールへ向かった。
先程水を抜いていたはずなのに
プールには再び水が張られていた。
「おーい高木くん!どこにいるー?」
警部さんが呼びかけても
高木刑事はプールサイドのどこにもいなくて…
『江戸川くん、高木刑事はどこに行っちゃったの?』
「見えないだけでちゃんといるよ?…プールの中にね。」
「「『えぇ!?!?』」」
みんなでプールに目を向けたけどやっぱりどこにもいなくて…
江戸川くんはタネ明かしをすると言って
プールに手を突っ込み、フックに引っ掛けてある釣り糸をカッターで切っていた。
…するとプールの中央から水槽と共に高木刑事が顔を出した。
「どうでした警部、僕の姿見えませんでしたか?」
「あ、ああ…でもなんで!?」
「光の全反射の影響さ。
水と空気はどちらも透明だけど光の屈折率が違うからね。」
…世良さん、その説明じゃ私たちには分かりません!
それに私は理科が苦手だから理解できるはずもなかった。
「じゃあ簡単にやってみるよ!
高木刑事!さっきの水槽持ってきてくれる?」
高木刑事は水槽をプールサイドに置き
水槽の1/3くらいまで水を入れて
江戸川くんはそこに10円玉を1枚沈ませていた。