第33章 運命 ✴︎
赤井さんはキッチン近くの扉から入ってきて
ミネラルウォーターを飲み終えてから
私がいるリビングへと近づいて来た。
『あの…用意してたデザート、一緒に食べませんか?』
「あぁ、是非頂こう。」
赤井さんは私の方に足を進めて、隣に座ってくれた。
…そして机に置いてあるカップケーキを見て
とても嬉しそうに笑っていた。
「懐かしいな…あの時見たのと同じだ。」
『っ…覚えていたんですか…?」
「いや…今日思い出したんだ。」
『私も今日…
安室さんと話していた時に思い出したんです。』
「やはりそうか…。
急にお前からメールで連絡をもらったし
この家に帰って来たら、嗅いだ事のある甘い匂いがしたからな?
それに、俺と会った事があると話を切り出そうとしているお前の様子も分かりやすかった。」
…やっぱり赤井さんてすごく賢い!
隠し事できる気がしない…!!
『私…赤井さんと会った事があるって思い出した時
なんか…すごく嬉しくなっちゃって…
赤井さんにも思い出して欲しくてこのケーキ作ったんですけど
ちょっと舞い上がりすぎたと思ってます…。』
「馬鹿……俺だって同じだ。
お前と会った事があるって分かった時…
美緒とは出会うべくして出会ったんだと…
そう思ったくらいだからな。」
赤井さんも私と同じ事を考えてくれてたんだね…
私と出会った事を…運命だって思ってくれたんだ…
『9年も経ってしまいましたけど
あの時は助けてくれてありがとうございました!』
「だから礼はいらないと言っただろう。
だがあの時…お前から貰ったケーキは
同僚にあげたから食えなかったんだ。」
『ふふっ、そうなんですか?じゃあ食べてみて下さい!
ホストファミリーのみんなには好評だったので
味の保証は出来ますよ?」
赤井さんはフォークでケーキを一口掬い
パクッと口に含み味わって食べているようだった。