第32章 留学
9年前ーーー…
大学を卒業し、FBIの採用試験にパスをした俺は
毎日様々な任務をこなし、忙しい日々を送っていた。
FBI本部があるのはアメリカのワシントンだが
その日は仕事でニューヨーク州を訪れていた。
思ったよりも早く仕事が片付き
適当に街をぶらぶら彷徨っていた時、
男2人が1人の女に絡んでいる所を目撃した。
「Give me that thing!(それを寄越せよ!)」
『Um...(えっと…)
This can only be given to the person
who bought the cake.
(これはケーキを買ってくれた人にしかあげれません。)』
ケーキ屋の入り口の前で
ガラの悪い男に怒鳴られている若い女は
どうやら日本人のようでまだ高校生くらい…
開店記念、と看板に書いてあるPOPを見て
恐らく男達が寄越せと言っているのは
ケーキを購入した客にだけ配るおまけの菓子のことだろう…
と、簡単に予想がついた。
…あんな若い女を大の男2人で脅かすとは……
とても黙って見ていられず
俺は店の方へと足を進め、男達に声を掛けた。
「Hey,(おい…)
Stop showing yourself up.
(みっともないからよせ。)」
俺の言葉に怒りを露わにして振り返った男2人は
俺の方へと近づいてきたが…
ジッと鋭く睨んだだけで恐怖を感じたようで
すぐにその場から走って立ち去っていった。
そして男達がいなくなった事にホッと安心している女に顔を向けた。
「大丈夫か?」
『へっ…?あ…日本語…』
「一応、日本人だからな。イギリスの血も流れているが。」
俺の言葉に目の前の女は納得し、勢いよく頭を下げてきた。