第32章 留学
「あら…あなた日本人ね?」
『え…!?に、日本語…!話せるんですか!?』
「ええ。友人が日本人でね…それより私に何か用?」
『あっ…急に声をかけてすみません!
有名なハリウッド女優さんに会えたのが嬉しくてつい…
あの…握手してもらえませんか!?』
私のお願いに応えてくれた彼女は
嫌な顔一つせず私と握手をしてくれたけど…
何だか…テレビで見るよりも…
『えっと…大丈夫ですか?少し顔色が悪いですよ…?』
「ああ…寝不足なのよ、仕事が忙しくてね。」
芸能界って大変そうだもんなぁ…
きっとストレスもかなり溜まっているんだろう。
そう思った私はカップケーキを手に取って
彼女に差し出した。
『あの…良かったらこれどうぞ!
今日この店の開店記念のサービスでお配りしてるんです。』
「え…?でもそれ…ケーキを買った人限定って…」
『私が作った物だからいいんですよ。
それと…握手してくれたお礼です!
疲れた時に甘い物を摂ると元気になれませんか?』
少しでも元気になってもらえたら…と思っていると
彼女は笑いながら受け取ってくれて
その場ですぐに包みからケーキを取り出して口に含んでいた。
「っ、すごく美味しいわ…本当に元気が出てきたみたい…」
『!!ありがとうございます!』
私の作ったお菓子をハリウッド女優が食べてくれるなんて…!
最高に嬉しくていい思い出が出来た!!
嬉しい気持ちのまま彼女を見ていると
ケーキを包みにしまい直し、
ご馳走様、と私に告げて立ち去って行った。
そしてその日の夜…
ホストファミリーのみんなでテレビを見ていると
昼間に店の前で会ったシャロン・ヴィンヤードが映っていて…
生放送のニュース番組にゲストとして出演しているようだった。