第31章 由縁
side 安室
東都水族館で起きた事件の後、
何日間かは組織の監視が続いたが
僕がノックだという疑いは完全に晴らすことができた。
公安の仕事はまだ家で行うことしか出来なかったが…
ポアロでのアルバイトはすぐに復帰できた。
現在午前10時…
組織から任務を言い渡され
深夜から行動を共にしていた僕とベルモット…。
今日はこの後、久しぶりに美緒さんとポアロで会う予定があり、いつもなら組織の仕事がある時は憂鬱な気持ちだが、僕の心はいつもより弾んでいた。
「今回の任務、予定通りに終わって良かったですね。」
「そうね。でも夜中に起きたせいで寝不足…
早くホテルに帰って休みたいわ。」
彼女が滞在しているホテルまで車で送れば
僕はそのままポアロに向かうつもりだが…
ベルモットには聞いておきたいことがあった。
「1つ…聞いてもいいですか?」
「なに?厄介な頼み事ならお断りよ?」
「いえ、そうではなくて…あなたがこの前言っていた
若山 美緒さんの事を聞きたいんです。」
美緒さんの名前を口にすると
分かりやすくベルモットの肩がピクッと揺れた。
「あの子の何が聞きたいの?」
「以前、会った事があると言ってましたよね?
何だかすごく気になってしまいまして…
あなたが特別に思っている女性ですからね。」
僕の言葉に
あからさまに嫌な顔をしてため息をついたベルモット。
「嫌よ…あの子と私の思い出なんだから。」
「僕をノックと疑って拉致したこと…
話して下されば水に流しましょう。」
「あなたって本当に嫌な男ね…」
自分でもそう思う。
だが気になったのは本当だ。
なぜ一般人である美緒さんが
この女に気に入られているのか…
僕はもっと…
美緒さんの事が知りたくて仕方がないんだ。