第31章 由縁
「はぁ……随分前になるけど
あの子とはアメリカで会った事があるのよ。
多分ホームステイでもしてたんだと思うわ。」
「なるほど…それで?」
「ニューヨークの街を散歩していた時だった…
俳優の仕事をこなして疲れていた私に
あの子が美味しいケーキを差し入れしてくれたのよ。」
「へぇ…どんなケーキだったんです?」
「ふっ…もうホテルに着いたし
続きが気になるならあの子に聞いてみたら?」
ベルモットは中途半端なところで話すのをやめて
ホテルに近い信号で止まっていた僕の車から降り
歩いてホテルに入って行った。
…まぁ、確かにあの女に聞くより
美緒さんに聞いた方が教えてくれそうだな。
しかし美緒さんの事を話していた時のベルモットは…
本当に穏やかな顔をしていたな。
それほどまでにいい思い出ってところか…?
信号が青に変わってから車を発進させてポアロに向かい
いつも通り働いていると
予定より少し早い時間に美緒さんがお店に来た。