第30章 救済
さっき見た黒の機体から放たれる弾丸が治ったと思ったら
今度は観覧車の中心部から爆発音が聞こえ
ゴンドラは激しく揺れた…
どうやら爆発のせいで車軸から外れ
観覧車は転がり始めてしまったようで…
『っ、みんな!何かに捕まって…!』
子供達を支えながら手すりに捕まろうとしても
激しい揺れのせいで、立っていることすら出来ない…
転がり続ける観覧車は水族館の建物にぶつかり
その反動で私は、ゴンドラの中にあったテーブルの角に額をぶつけてしまった。
『っ、痛…』
痛みに顔を歪めていると、再びゴンドラは揺れ…
床にポタッと赤い血の痕がつき、私は額を負傷したようだ。
「先生、血が…!!」
『へ、いき…っ。それよりまだ揺れるからっ…
みんな床に伏せてて!!』
本当はかなりズキズキと痛むけど
今は私の事で子供達を不安にさせるわけにはいかない。
子供達だけは…絶対守らないと…!
みんなの体を支えていると
観覧車の外輪を走る足音が聞こえて…
フッと上を見上げると、赤井さんと江戸川くんの姿が視界に入った。
『っ、赤井さん…』
きっと2人は
この転がる観覧車を止めようと動いているんだ…
外に目を向けると
観覧車は水族館のショーが行われるスタジアムに突っ込んで行きそうになっていて……
このまま転がり続けるとスタジアムを押し潰しちゃう。
きっと中には人もいるはずで
最悪の事態だと恐れていると
クラクションの音と、何かが観覧車にぶつかる音がした。
その正体を見ようと下を覗くと
黄色い重機のクレーン車が観覧車にぶつかっていた。
『っ、あれは…!』
はっきりとは見えなかったけど、
運転席には特徴的な銀髪が見えて…
あの女性が運転しているんだと分かった。
『っ、だめ!!あんなところにいたら…!』
この観覧車がクレーン車を潰しちゃうかもしれない…!
でも私の声は、遠くにいる彼女に届くわけがなくて…
そのままクレーン車を見つめていると
彼女はゴンドラに私がいることに気付いたようで…
優しくフッと笑顔を向けてきた。
『っ…』
彼女のその笑顔に驚いていると
クレーン車は恐れていた通り、観覧車に押し潰され爆発し
炎に包まれてしまった…