第30章 救済
「美緒…俺は大丈夫だ。」
『…そんなに顔傷だらけなのに何が大丈夫なんですか。』
「こんな傷、怪我のうちに入らない。」
いや…それはなんか安室さんに失礼な気が…
チラッと横目で安室さんを見ると
鋭い目つきで赤井さんを睨んでいた…。
「お前は早くここを離れろ。
組織の奴らがいつ襲って来るか分からないんだ。」
『いえ……
私は観覧車に乗っている子供達のところに行きます。』
爆弾は安室さんが解除してくれるだろうけど
子供達を放って私だけ先に安全な所に避難するなんて…
そんなことできないよ…。
「…美緒さん。
ここは本当に危険な場所なので…離れた方がいいです。」
『危険なら尚更、子供達の所に行かないと…
私は教師ですから、彼らを守るのが私の役目です。』
赤井さんと安室さんの目を交互に見てそう伝えると
2人とも大きなため息をついていた。
「美緒…
子供達がいるゴンドラの場所は分かっているのか?」
「いえ…
でも観覧車に乗ったのが今から20分前くらいですから…」
「なら…地上に近い場所のゴンドラですね。
美緒さん…
ここを真っ直ぐ行くとゴンドラのある場所に辿り着きます。
……気をつけて。」
『はい!ありがとうございます。』
安室さんにお礼を言うと、
なぜか赤井さんは安室さんを鋭い目つきで睨んでいた。
「気安く美緒の名前を呼ばないでもらおうか。」
「フン…嫉妬深い男は嫌われますよ。」
…もう!またこの2人は喧嘩を始める気なの!?
そんな事してる場合じゃないって言ったのに!
『私…もう行きますね?』
「待て……近くまで一緒に行く。」
赤井さんと共に通路を進んでゴンドラのある場所にたどり着いた。
「俺が連絡するまで子供達と一緒にいろ。
もし何か起きた場合、外に出ようとせず
ゴンドラの中で待機しているんだ。」
『はい…赤井さん…お気をつけて。』
子供達も心配だけど、赤井さんの事も心配でたまらない…
「美緒…そんな顔をするな。」
『っ、また…会えますよね…?』
「馬鹿…当たり前だろう。」
赤井さんは両手で持っていたライフルを片手で持ち肩に預けて
片方の空いた手で私の体を抱き寄せた。