第29章 記憶
『うーん…』
「先生!今ポアロにいるって言ってたよね!?
安室さんに代わってくれる!?」
『えっ…!?
あ、安室さんは…今日はいないみたいだけど…』
店内を見渡して江戸川くんにそう伝えると
女性の店員さんが私達の元へ近づき声を掛けてきた。
「安室さんなら今日は休みですよ?
今朝いきなり休ませて欲しいって連絡が来てそれっきりで…
何度か電話してるんですけど繋がらないんです。」
『…ってことらしいけど……
そういえばあの女性は大丈夫だったの?』
「さっき警察病院に運ばれたからもう大丈夫だよ!
じゃあ先生、みんなの事よろしくね。」
江戸川くんとの電話はそこで終わり、
みんなでお茶を飲み終えてから私は1人ずつみんなの自宅まで送り、私も自分のアパートへ帰ってきた。
なんだか色々なことがあって体は疲れているのに
銀髪の女性の事や彼女が呟いていたらしいお酒の名前のこと…連絡が取れない安室さんのこと…
忙しそうにしている赤井さんのこと…
いろんな事が気になって
その日の夜はあまり眠れず、浅い睡眠だけを繰り返し
次の日の朝を迎えた。
ーーー…
『うーん…気になって来ちゃったけど…
流石にあの女性には会えないかなぁ?』
私は今、東都警察病院前のバス停にいる。
江戸川くんからあの女性は大丈夫って聞いたけど
どうしても気になって…なんだか心配で病院に来てしまった。
とりあえず受付であの人に会えないか聞いたけど
面会謝絶と言われてしまった。
諦めて帰ろうとしたところで
吉田さんと小嶋くん、そして円谷くんの3人が病院の入口から中に入ってきた。
『えっ!?なんでみんなここにいるの!?』
「先生こそ!!なんで!?」
どうやら子供達もあの女性が心配でここに来たようだった。
『さっき受付で聞いたけど、
面会謝絶って言われたから会うのは無理そうだよ?』
「うーん…あ、そうだ!
高木刑事に連絡して頼んでみましょう!」
え……そんな事していいの円谷くん…。
私が驚いている間に円谷くんは
高木さん、という刑事さんに電話をしていて…
病院内の一階のラウンジで待つように言われ、そこに移動した。